瀬川裕美子ピアノリサイタル vol.11
ひとつの詩のはじまり
〈私の〉オブジェ・トゥルヴェ ―L′Oeuvre: Tout / Fragment
2025年12月6日(土)15 :00開演
@TOPPANホール
-サントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサート-
Anniversaries Boulez 100.
Anniversaries 福士則夫 80.
----「作品」は真の全体なのだろうか?
それともむしろ、より大きな未完のプロジェクトの時間的に限られた「断片」なのか?……
ブーレーズ「コレージュ・ド・フランセ」の講演録より
(Leçons de musique.)
P.ブーレーズ生誕100年の節目に、彼のwork in progressのありか=「創造の厚み」の只中に身を置き、聴取と時間が切り結ぶ中で立ち上がる「音楽」と「文字」と「イメージ」の“あわい”を行き来する……パウル・クレーのコンステレーション(無限の組み換え可能性)─ひとつの詩のはじまり。
この度は、前回、前々回の「クレー・リサイタル」で2公演に渡って演奏してきたブーレーズの『第2ソナタ』、そして『ノタシオン』以外の、現在出版されているブーレーズのピアノソロ作品を取り上げます。『第1ソナタ』から始めることは、今回とても深い。ブーレーズ没後の2019年、楽譜の別冊に「難破から生き残った断片」と編集者たちの苦慮の思いが謳われ、出版された未完の『第3ソナタ』の「フォルマン1:アンティフォニー」の断片群も…
ブーレーズが重要な成長の年と位置付けた1947年、Pianoとオーケストラのためのアンティフォナルな(交唱構造)『Symphonie Concertante(協奏交響曲)』を作曲していましたが、その草稿を1954年に喪失してしまう…1989年にポリーニをソリストに迎えた、この消えた草稿を求めるかのようなプロジェクトはついに実現に至らなかったけれど、2001年の拡張版『アンシーズ』へ向かうブーレーズのwork in progressでその構想は見え隠れする。『レポン』創作中にブーレーズは「暗い森Selva Osculaに入っていくかのようだ…」と、自らの古いスケッチの断片に立ち返るときの苦悩をふと手紙で書いている。
今の私も、まさにそんな心境です…。感動的な「暗い森」。
このプログラムは、この世に現れている作品とは、また別に“存在したであろう”報われなかったスケッチの存在までもどこか聴き手の皆さんに想像していただきたい、まさに誰にとっても新たにはじまる「詩のはじまり」であってほしいと願ってつくりあげたプログラムです。
そのmissing linkをもとめていくかのように、ブーレーズの自宅に無限に積み重なるスケッチたち…
私はいま同時に、生誕80歳を迎えられるのに、私よりも若い22歳の福士則夫青年のスケッチと草稿を目にして、そのブーレーズの思いも感じつつ、並行作業でこの『5つの断片』の世界初演に向けて準備をしています。
ブーレーズがセリーの原理を緩めていく1950年代後半から、主に『第3ソナタ』の「コンステラシオン」以降、最後のピアノ曲『天体暦の1ページ(2005)』に至るまでの過程でブーレーズの音響を特徴づけていくトリル、ソステヌートペダルの使用によるハーモニカルな「背景の共鳴」が遺憾なく発揮されている…それがこの大作の福士則夫先生のピアノ曲『5つの断片(1967)』にも、その後の先生の中心的作風となる打楽器による変幻自在な音色世界”のリズム構造、色彩美といったものが、ピアノの幅広い音域を使った「共鳴効果」によって豊かに“予感”されているようです。「膨大なスケッチ」と共に長らく公開されることなく日本近代音楽館に保存されていたこの断片集の5曲目のタイトルは「P-B」であり、当時演奏不可能としてプライベート録音すら残されていない…。
L′Oeuvre: Tout / Fragment(作品:断片/全体)
◉プログラム
・P.ブーレーズ:ピアノソナタ第3番(1955-63)
P.Boulez:P.Boulez : Troisième Sonate pour piano
―フォルマン:1 アンティフォニー(断片)より
Formant 1: ≪Antiphonie≫(fragments) Antiphonie Ⅰ.Ⅱ, SigleⅠ.Ⅱ, Trait initial
―フォルマン2:トロープ
Formant 2:≪Trope≫
―フォルマン3:コンステラシオン
―Formant 3:≪ Constellation≫
・P.ブーレーズ:スケッチの断片(1987)
P.Boulez:Fragment d’une ébauche
・福士則夫:5つの断片(1967) 世界初演
Norio Fukushi: Five Fragments for piano
I , H
II, 技法につい
Ⅲ, S,B,W
Ⅳ. Y.
Ⅴ, P-B
――――――――――――――――――
・P.ブーレーズ:ピアノソナタ 第1番
P.Boulez: Première Sonate pour piano
・J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080より 「3つの主題によるフーガ」(断片)
J.S.Bach: Fuga a 3[4]Soggetti BWV1080/19
・P.ブーレーズ:天体暦の1ページ(2005)
P.Boulez: Une page d’ephoemeride
・W.A.モーツァルト:ロンド K.494
W.A.Mozart Rondo K.494 F Dur
・P.ブーレーズ:アンシーズ(1994/2001)
P.Boulez: Incises (1994/2004)
全席自由 一般3000円 (当日3,500円)
学生1500円 ※学生券は入場時に学生証等の提示が必要です
《チケット・問い合わせ》
TOPPANホールチケットセンター 03-5840-2222 (土日祝休)www.toppanhall.com
セガウェイ・プロジェクトWebサイト www.yumikosegawa.com
090-1106-3302
c2VnYXdheS1wcm9qZWN0IHwgbmlmdHkgISBjb20=
Also check out other Music events in Tokyo, Entertainment events in Tokyo.