【こころをめぐる冒険Ⅱ】
第3回:「心の傷とアディクション」
宮地尚子×松本俊彦 コーディネーター:島薗進
嗜癖行動(アディクション)といえば、飲酒、喫煙、薬物、過食、ギャンブル、ゲームからリストカットなどの自傷行為に至るまでさまざまですが、深い心の傷(トラウマ)がその要因になっていることも多く、またアディクションがトラウマを増幅し、自殺にまで至ることにもなります。こうした困難からどのように脱していけるのでしょうか。また、こうした心の働きに対してどのようなケアが可能なのでしょうか。こうした問題に長く取り組んで来られたふたりの精神科医、宮地尚子さんと松本俊彦さんにお話しいただき、ともに考えていきます。(筆:島薗進)
<宮地尚子先生より>
何か言葉になりづらいこと、誰もが口ごもるような状況があるとき、そこでは、トラウマティックな現象が起きていることが少なくない。トラウマはPTSDに限らず、さまざまな反応をもたらし、アディクションもその一つでありうる。「環状島」は内海のあるドーナツ型をした島で、トラウマについて語ることの困難さを形象化したモデルである。環状島を用いて、アディクションとトラウマの関係や、当事者・支援者・研究者たちのポジショナリティについて考えたい。
<松本俊彦先生より>
人はなぜアディクション問題を抱える人は自殺死亡リスクが高く、アディクションそれ自体が長期的には自殺の危険因子と見なされています。しかしその一方で、「いますぐ死ぬのを一時的に延期する」という点に注目すれば、短期的には自殺に対して保護的、抑止的な因子と見なすこともできます。今回の講演では、習慣的なリストカットのような嗜癖行動をとりあげて、アディクションと自殺との複雑な関係を中心に話をしてみたいと思います。
日時 2026年1月18日(日)14:00~16:30 (開場13:30)
講演・対談・質疑応答
会場:緑が丘文化会館204号室(和室)
お申込み:以下URL先より
https://peatix.com/event/4682282/view
※対面のみ(ライブ配信・見逃し配信はございません)
※キャンセルは、講座3日前の1月15日(水)14:00まで受け付けます。それ以降のキャンセルはお受けできませんので、ご了承のほどよろしくお願いいたします。
宮地 尚子 Miyaji Naoko
一橋大学大学院社会学研究科・特任教授。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。精神科医師、医学博士。2001年より一橋大学勤務。専門は文化精神医学・医療人類学・トラウマとジェンダー。主な著書に『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)、『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷つきのこころ学』(NHK出版)、『傷のあわい』(ちくま文庫)、”Trauma Island” (secure base books)などがある。 ホームページ:
https://www.naokomiyaji.com
松本 敏彦 Matsumoto Toshihiko
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長。1993年佐賀医科大学卒業。国立横浜病院精神科、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学医学部附属病院精神科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部、同 自殺予防総合対策センターなど経て、2015年より現職。2017年より同センター病院薬物依存症センターセンター長、厚生労働省依存症対策全国センター共同センター長を兼務。日本社会精神医学会理事、日本アルコール・アディクション医学会理事。
島薗 進 Shimazono Susumu
宗教学者、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、大正大学客員教授。1948年生。東京大学大学院博士課程・単位取得退学。東京大学大学院人文社会系研究科・教授、上智大学大学院実践宗教学研究科・教授、上智大学グリーフケア研究所所長を経て、東京大学名誉教授、NPO法人東京自由大学学長、上智大学グリーフケア研究所・客員所員、大正大学・客員教授。専門は近代日本宗教史、宗教理論、死生学、生命倫理。著書:『宗教学の名誉30』(ちくま新書、2008年)『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年)、『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版、2012年)、『ともに悲嘆を生きる』(朝日新聞出版、2019年)など。