さて、定期演奏会まであと一週間となりました。
今回の「クローズアップ春響」は指揮者の
臼木忠臣先生にお話を伺いました。どうぞよろしくお願いいたします。
Q:今回も2つの交響曲、それもドイツ3大Bのベートーヴェンとブラームスです。その中から2つの交響曲を演奏というのは指揮者にどんな難しさがありますか?
臼木:今回演奏する2曲とも、音楽史上とても重要な位置付けの作品です。そんな曲を改めて勉強し直せた事は、私自身とても幸せな事だと思っています。
ベートーヴェンの2番は、まだ古典派の作曲技法が色濃く残っている曲で、演奏上はさほど難しくないのですが、音楽として演奏するには、ごまかしが効かない難しさがあります。
一方ブラームスは楽譜面も難しく、更に言えば音楽的にも中身の濃い作品となっています。
2曲ともアンサンプル力の高さが求められる作品です。
Q: 特にベートーヴェンの2番はちょうど難聴が始まりハイリゲンシュタットで遺書を書いています。でも同時期に書かれた「月光ソナタ」と異なり音楽はとても明るい。これはどう見ますか?
臼木:交響曲2番はベートーヴェンの交響曲の中では、マイナーですが、この後作曲される3番以降の交響曲の基盤とされる、とても重要な位置付けの曲だと思います。
この曲はニ長調で書かれています。人間にも一般的に血液型等による性格診断が存在しますが、音楽にも調性による性格があります。
ニ長調の場合、華やかで輝きがあります。また快活で躍動的な印象を得るため、舞曲や祝典曲にも良く使われ、オーケストラ楽器ととても相性の良い調性と言われています。更にこの曲には付点のリズムが多く使われており、それらの相乗効果によりこの曲には「明るさ」を感じるのだと思います。
一方、同時期に作曲された「月光」は嬰ハ短調で、深い悲しみや激しい感情の性格を持つ調性と言われており、内面的な苦しみを表現する時に使われています。
これからから推測すると、難聴という事実を乗り越えようとするベートーヴェンの内面の苦悩と強さが表れていると考えられます。
Q:ブラームスの交響曲1番はベートーヴェンを意識して21年も時間を費やしました。楽曲のどの部分に意識した後があるのでしょうか?
臼木:音楽史上19世紀後半ごろからヨーロッパのドイツ音楽は大きな変革期を迎えます。その一つがワーグナーやリストが率いる新ドイツ楽派の存在です。この楽派は、古典派や前期ロマン派の特徴である、絶対音楽(音楽そのものを純粋に構築)を重視せず、標題音楽(物語や思想の描写) や半音階的で無限に進行する和声など音楽や規模の広がりを重視した楽派です。
一方、ブラームスは絶対音楽(音楽そのものを純粋に構築)を重視し、ソナタ形式や対位法など伝統的手法を継承した、絶対音楽派に属されます。
さて、本題であるブラームスの交響曲第一番とベートーヴェンの関係性ですが、この曲はベートーヴェン5番「運命」と9番「合唱付き」との関係性が強いと言われています。
調性面で言うと「運命」と同じハ短調が使われ、両曲とも最終楽章に向けて「苦悩から歓喜へ」という暗示を示しています。
また、4楽章のコラール部分は第9交響曲の歓喜の歌を連想させます。
更には、両者ともソナタ形式を軸に、古典的な厳格さと重厚な対位法を使用し、ベートーヴェンが第5交響曲「運命の動機」を全ての楽章に使用したように、ブラームスも1番の交響曲のテーマを全楽章に形を変えて使用しています。
ブラームスは、ベートーヴェンの劇的・外向的な表現に比べて、より内省的で構築的に音楽を作り上げており、これが「ベートーヴェンの正統な後継者」と同時に「新しいブラームスらしさ」と言われている由縁です。
Q:今回の演奏会の見どころをお聞かせください。
臼木:若々しいベートーヴェンの明るさ・躍動感 と、ベートーヴェンの精神を受け継ぎながら、ブラームス自身の「苦悩から歓喜」の物語 です。
Q:ファンの皆様へ一言お願いします。
臼木:この度は、クラウドファンディングで多くの皆様にご支援を頂き、感謝申し上げます。
今定期演奏会は、前回11月に開催した演奏会から、1年経ってない練習期間だったため、お聞き苦しい点もあるかと思います。ご来場頂ける皆様にお楽しみ頂けるよう、精一杯演奏させて頂きますので、引き続き温かいご支援賜りますよう、お願い申し上げます。
臼木先生、お忙しい中ありがとうございます。9月28日の定期演奏会(春日部市民文化会館13:30-)に向けて最後の最後まで頑張ります!
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