ギャラリートーク
テーマ 平和は与えられるものではなく、守っていくべきもの
◆11月5日(水) 午後2時から2時30分 お話 著者 カン・ジェスクさん
◆11月8日(土) 午後2時から2時30分 お話 絵作者 イ・ダム、キム・クンヒ夫妻
※ 絵の技法と二人で取り組んだこと。
■著者からのメッセージ■
ギャラリートーク テーマ
平和は与えられるものではなく、守っていくべきもの
2008年8月15日、光復節(祖国解放記念日)にあわせて出そうと思っていた『終わらない冬』(韓国語版)を、曲折を経てようやく出版することができました。
1992年の秋、私が日本で勉強をしていたときのことです。金学順ハルモニの証言を東京の韓国YⅯⅭA講堂で聞く機会がありました。金学順ハルモニは、1991年8月に、韓国に住んでいる人として初めて、日本軍「慰安婦」であったことを証言した方です。1995年、留学を終えて韓国に帰り、日本軍「慰安婦」のハルモニたちを訪ね歩き、証言を集め、記録をして行きました。
戦争が起これば、子どもや女性、障がい者、貧しい人々らが真っ先に犠牲になります。
日本軍「慰安婦」ハルモニたちは戦争の最も大きな被害者です。ハルモニたちが経験したことは、他のどのようなものとも比べようのない痛みでした。けれど日本軍「慰安婦」問題はいまだに解決されていません。
平和とは、与えられるものではなく、はぐくみ、守っていくものです。とくに社会の、もっとも弱く疎外されてきた人々の人権を守ることが、私たちみんなの平和を守ることなのです。歴史は、力のある者の立場からではなく、疎外された人々の立場から書き換えられなければなりません。ですから、日本軍「慰安婦」被害者の問題は、過ぎ去った過去の問題ではなく、まさしく、いま、現在、私たちが解決しなければならない問題なのです。
この本は、金順徳(キム スンドク)ハルモニと、裵奉奇(ぺ ポンギ)ハルモニを思いつつ書いたものです。
金順徳ハルモニは、「ナヌムの家」で暮らし、絵を描いて日本軍「慰安婦」証言活動をなさっていました。わたしは1997年に金順徳ハルモニとともに、日本で「ハルモニ絵画展」の全国巡回をはじめ、さまざまな証言活動を行いました。
裵奉奇ハルモニは戦争が終わった後も沖縄に残っていましたが、1970年代に、もっともはやく日本軍「慰安婦」被害者であったことを証言した方です。1972年、沖縄が米軍政から日本に返還される際、不法滞在者であったので強制送還されるおそれがあったため、仕方なく日本軍「慰安婦」であったことを名乗らなければならなかったハルモニを、わたしは忘れることができません。
2008年の春、済州島のはて、マラ島の「祇園精舎」で、遅ればせながらこの話を書き始めました。けれどもこの本は、私一人が書いたのではありません。日本軍「慰安婦」ハルモニたちをはじめ、ハルモニたちを支援するすべての方々、ナヌムの家、韓国挺身隊研究所、韓国挺身隊問題対策協議会、挺身隊ハルモニとともにする市民の会、日本軍「慰安婦」ハルモニとともにする統営巨済市民の会、平和博物館、ワシントン挺身隊問題対策委員会、そして日本にある沖縄民衆連帯、関釜裁判を支援する会、女たちの戦争と平和資料館、そのほか目に見えないところで力添えを下さったすべての方々の作品です。深く感謝します。
いまは亡くなられてしまった金順徳ハルモニと裵奉奇ハルモニ、そしてすべての日本軍「慰安婦」被害者ハルモニのみなさんに、この本を捧げます。
2010年庚戌国恥百年、8月15日を迎えて カン ジェスク