「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」(ヒロセミ)はこの夏、カザフスタンのセミパラチンスク核実験場の被害を受けたマイラ・アベノバさんを広島に招待します。
母、姉、兄、そして愛する夫を失った彼女は、ヒバクシャが置き去りにされている現状に怒りを抱き、国際NGO「POLIGON21」を2022年に設立。ヒバクシャを支えるための新しい法律を求めて5万筆の署名を集め、2025年3月に米ニューヨークで開催された核兵器禁止条約に参加するなど、精力的な活動を続けています。
セミパラチンスク核実験場では旧ソ連時代の1949~89年、456回もの核実験が繰り返されました。影響を受けたヒバクシャとその子孫は、150万人にのぼるとも言われています。最後の核実験から30年以上が過ぎ、セミパラチンスクのヒバクシャたちは今、何を思うのでしょうか。そして、「核なき世界」の実現に向けて、ヒロシマが果たすべき役割とは? セミパラチンスクとの交流を続けてきた専門家の話も手がかりに、ともに考えましょう。
【登壇者・内容】
マイラ・アベノバ
(核実験被害者支援団体「DOM」代表/「POLIGON21」前事務局長)
――なぜ私たちは立ち上がったのか/セミパラチンスクの今
星正治(広島大学名誉教授、ヒロセミ顧問)
――セミパラチンスクの核被害/カザフスタンとヒロシマの交流の歴史
平岡敬(ジャーナリスト、ヒロセミ名誉会長)
――ヒロシマの役割/ヒバクシャ運動の意義
進行:小山美砂(ジャーナリスト)
【POLIGON21とは】
2021年10月、セミパラチンスク核実験場の閉鎖から30周年を迎えるにあたり、NGO「DOM」の主導と「ネバダ・セミパラチンスク運動」の協力のもと、カザフスタンのセメイ市で国際会議が開催されました。この会議は、セミパラチンスク核実験場(SNTS)の被害者たちによる新たな市民運動の始まりとなりました。この運動は、国内の変革や、2020年12月に国連総会で採択された決議(世界各国が被災地域への多面的な支援を約束する内容)から大きな影響を受けました。
2022年8月には、「POLIGON 21」が非政府組織(NGO)として正式に登録されました。委員会の目的は、市民社会の力を通じて、セミパラチンスク地域の経済的・精神的復興を推進することです。
設立から短期間で、団体の明確な活動方針と効果的な広報活動により、世界各地に暮らすSNTS被害者たちから多くの支持と共感を得ることができました。現在も、さまざまな関係者との連携を続けながら活動を展開しています。
「POLIGON 21」は、社会的・経済的課題の解決に向けた新たなアプローチを提示しています。例えば、カザフスタン共和国の大臣や国会議員と協力し、地方および国家レベルの行政機関と連携して、法律や開発プログラムの立案・改善を進めています。
また、国内外のメディアやSNS、国際会議などでのスピーチを通じて、核実験が地域住民と環境にもたらした長期的で深刻な影響を訴えています。こうした活動は、核兵器の危険性と、その被害に苦しむ地域社会の問題に対する国際的な関心を高めるうえで、大きな意義を持っています。(公式パンフレットの英文を翻訳)
【ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクトとは】
広島アジア大会をきっかけに、旧ソ連による核実験場ヒバクシャ支援を目的に1998年に設立された。
1999年現地支援訪問以来、医療機器、医薬品支援、ヒバクシャ医療専門家派遣/招聘、留学生受け入れ支援、市民相互訪問、講演会、展示会等々を重ね、2023年には外務大臣賞・団体賞を受賞。