中尾ハジメと考える練習をしよう 2025秋・京都
〜F. M. アレクサンダーと歴史を軸のようにして〜
AT(アレクサンダー・テクニーク)は身体でおぼえる技法だが、それは知的な探究でもあり、身体についての常識的な認識をつき崩すものだといわれている。しかし、それだけではとても充分といえないのではないか。 ATの「身体知」というべき、その限界のさらに外には、わたしたちを支えてきたさまざまな人、物、社会との関係があったはずである。この「考える練習」プログラムは、創始者アレクサンダーから現在までの、ATと社会との関係を、歴史的な文脈の中に語りなおそうとする試みでもある。しかし、教科書的な定番の「歴史」が目標でないことは強調しておきたい。目標は、むしろ、個々人のいわば「常識的」自己像を振りかえり、ときには解体し語りなおすこと、またあまり疑うことのなかった「常識的」社会観を振りかえり、語りなおすことだといっていい。そして、「常識」のこういった解体や、社会認識の再構築と並行するのでなければ、たとえATを身につけることができたとしても、現実社会に等身大の関心を持ちつづけることはむずかしいだろう。たとえばATをめぐる社会的な評判——医療の世界での評判から世間一般の受けとり方まで——に対しても、回避することなく、等身大の冷静な対応ができるのだろうか。
AT業界の人びとの中に「常識」として蔓延する「社会への無関心」の具体例をひとつだけあげておこう。1973年のノーベル生理学・医学賞は、カール・フォン・フリッシュ、コンラート・ローレンツ、ニコラス・テインバーゲンの3人の動物行動学者に贈られ、ティンバーゲンは受賞講演で、その「半分をアレクサンダー・テクニークの説明についやすほど熱をいれていた」(ルーリー・ウェストフェルト『アレクサンダーと私——[アレクサンダー・テクニーク]への道』の訳者序文)という。このことをAT業界の多くの人は知っているが、講演の半分にもなるというその内容を具体的に説明することができる人は皆無に近いのだ。しかもじつは「動物行動学とストレス病」と題するその講演全体が、動物行動学的な研究を理解し評価しようとしてこなかった医学界の狭量な保守性に対する叱責を意図したものであったことを語る人もまずいない。これは、AT業界自身の社会に対する無関心と保守性の深刻さを表していないだろうか。
繰りかえそう、このプログラムでは「常識的」な自己像、つまり社会に通用すると多くの人が思いこんでいる自己像の解体をめざす。そしてまた「常識的」な社会観の解体をめざす。自己像の解体とは、自分自身の今ある考え方・物事のとらえ方の起源をたどりなおす思考の方法、いわば歴史の方法によるしかない。平たくいえば、正直になって自分を振りかえることだ。それができるときの解放感は、ATそのものによって得られる解放感と同質のものであるようにも思える。それは、遠くにあこがれてきた自由が、じつは、ただ自分に正直になることだとわかる面白さだといっていい。しかも、そのための道具立てはきわめて簡単。ただただ、みんなで話したり、読んだり、書いたりというだけなのだから。(中尾ハジメ)
○日時 2025. 9/11, 9/25, 10/9, 10/23, 11/6 (木曜日・全5回)
10:00-15:00
○ファシリテーター 中尾ハジメ(アレクサンダー・アライアンス・インターナショナルJAPANファシリテーター)
○会場 アレクサンダー・アライアンス・インターナショナルJAPAN京都スクール
https://alexander-tech.jp/access
○受講費 25,000円(全5回)
○お申込み・お問い合わせ
下記メールアドレスに①お名前②ご連絡先③ご参加の動機などを明記の上、お申込み下さい。
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【中尾ハジメ/プロフィール】
アレクサンダー・アライアンス・インターナショナルJAPANファシリテーター。1945年東京生まれ。組織とは無縁なピッピーの生き方を選択するも数年で挫折。幸運にも1975年から京都精華短期大学(現京都精華大学)の教員となり、英文購読、社会意識調査法(89年開学の人文学部)、環境ジャーナリズム(2000年開学の環境社会学科)などの科目を担当した。翻訳の仕事に、ウィルヘルム・ライヒ『性と文化の革命』、アイリーン・スミス/ユージ・スミス『MINAMATA』、ハワード・ローゼンバーグ『アトミック・ソルジャー』、シオドーラ・クローバー『内陸のくじら』、ジョセフ・クローニン『大石誠之助の生涯 紀州の医師と大逆事件』などがある。
○主催
アレクサンダー・アライアンス・インターナショナルJAPAN
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